Amazonの物流センターの除草がウシではなくてヤギなのか
Amazon.co.jp、岐阜の物流センターで除草に“ヤギ”導入 - ねとらぼ
この記事を読んで思わず家畜の行動について思い出した。
なんでヤギなのか。ヤギは前歯に切歯があるので、短草を採食するように適した進化を遂げた動物であるからだ。
採食行動のうち、飼料を口腔内に取り込む動作は、草食動物では主に歯の構造によって異なる。牛では、上顎切歯がないため舌を使って牧草を巻き込む。同じ上顎切歯のないめん羊では、上顎の歯床板と下顎切歯で歯を くわえ込み、頭部を前方上へ動かし刈り取る。その結果、めん羊は牛よりも短草に適応している。馬は上下切歯で草をくわえて引きちぎるので、めん羊同様短草型の草食動物である。
野附 巌, 山本 禎紀 「家畜の管理」より
この文章ではヤギについては触れていないがヤギの歯について考察してみよう。
ヤギの歯式は0033/3133となっていて上顎切歯はないものの上顎に歯床板が存在するのでめん羊のように刈り取る動物だ。だから短い草でもどんどん刈り取ってくれる。まさに草刈りには適した動物である。
ヤギは同時にめん羊などは異なり根っこまで掘り起こし食べてしまう習性を持っている。つまりただの草刈りじゃなくて、まさしく「除草」をしてくれる。このことがカシミアを生産する地域で砂漠化を引き起こしている要因となっていることも覚えていてもらいたい。
中国内蒙古自治区の砂漠化に対する最大の要因はヒツジ・ヤギの過放牧である。これは自然の回復能力を上回る数の家畜を放牧することで、草が根こそぎ食べられ砂漠化するものだ。根茎も食べつくされるため翌年新しい芽が出てこなくなり、そして根がなくなることで砂の移動が起こる。露出した砂地には木や草など風を遮るものがなくなることで風が吹き抜けるようになり、あるきっかけ(木の切り株や石などのある場所)で砂が集まりはじめ、それが流動化し流動砂丘となり植生のある地までも飲み込んでいく。
砂漠化の背景」でも書いたとおり、ヤギ・ヒツジの過放牧は砂漠化の大きな原因である。特にヤギは草の根までも食い尽くすことから、砂漠化しつつある地域にも放牧できる利点がある。しかし同時にこれらの地域に決定的なダメージを与えてしまう。カシミヤはヤギの仲間。
砂漠化の背景より
また、ヤギは牛よりも多くの草や低木も食べるので除草といった観点では優れている。
こういうふうに家畜を上手く利用した循環型農業が広まっていってくれたらなぁと思いながらこの記事を読んだ。